天冥の標Ⅵ 宿怨 PART2

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天冥の標6 宿怨 PART 2 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標6 宿怨 PART 2 (ハヤカワ文庫JA)
小川 一水 富安 健一郎
早川書房 2012-08-23

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 1巻の最後によると《救世郡》は他の勢力から排斥されたようだけど、6巻のPART1の時点ではむしろ他の勢力と合流しつつあるようだったのにどうしてそうなったんだ? と疑問だったのだけど、今回の展開を見るとなんとなく納得できる気がする話の流れだった。やはり《救世群》のこの先の道はまだまだ暗いままなのか。1巻の内容からしてわかっていたこととはいえきついなあ。

(以下ネタバレ)












(ネタバレ開始)

 ラバーズに癒され、アンチオックスの一部と合流し、そして何よりも地球発祥の太陽系人類よりもはるかに優れたカルミアンたちの助力まで得て、長くなってしまった《救世郡》の歴史の中で最も活力に満ちた時期を迎えたというのに、早くもその破綻の兆しが表れているのが悲しいな。

 カルミアンのテクノロジーをもってすれば冥王斑も治せるというイサリの知った事実がこの上なく残酷。よりにもよってもう後戻りのできなくなったときに、いとも無造作に提示されるとは。しかしこれで納得。1巻で冥王斑がひろがったときは回復者は他者に感染させなくなっていたみたいなのは何故かと思っていたら、このときの薬があそこにつながっていたからなのね。

 でもなあ……もし仮に2巻の千茅たちの時代の《救世郡》の前に同じようにカルミアンが現れて、「硬殻化して非染者に牙をむきますか? それとも冥王斑を治しますか?」と選択肢を与えられたとしたらと考えてみると、もちろん多くの人が冥王斑の治療を望むだろうけど、非染者に対する復讐を望む人も少なからずいそうな気がするんだよな。つまり冥王斑は悲劇の原因だけど、それだけが全てではないのではないかと。

 もちろん一般人の中にも冥王斑患者のために尽力した人々はいたし、それは時代を下ってもそうだったのだろうけど、悪意を向けてきた者、権益のために利用しようとした者、そして恐るべき病気とはいえ必要以上に排斥的な態度を示した者の方がおそらく圧倒的に多かっただろうと思われるわけで。実際、2巻の千茅が脱走した時期や6巻PART1のアイネイアたちとイサリのように、もっと歩み寄れる可能性だってあったのだし。もちろんこの2例はごく短期間のことで、これを標準として考えるわけにはいかないだろうけど。

 そう考えてみると冥王斑が治せるかどうかってのは、ある意味ではもはやそんな問題ではないのかなという気も。

 しかし《救世郡》の得たカルミアンのテクノロジーってのはずるいな。ドラえもんの秘密道具を借りられるのび太くんの如しというか、異星人のオーバーテクノロジーを手に入れた人類史上初の勢力ってことになるわけで、どれだけラッキーな転機がめぐってきたんだよというか。もっともここまで追い詰められ、迫害されてきた《救世郡》が太陽系の他の勢力に対して一発逆転するにはこれぐらいチートなきっかけがないと無理だったのだろうけど。

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