グリザイアの果実

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グリザイアの果実グリザイアの果実
フロントウイング 2011-02-25

by G-Tools
 体験版をやってみて面白そうと思えたので手を出してみたわけだけど、残念ながら期待したほどではなかった。全5ルートある個別ルートのうち、最初から最後まで十分楽しめたといえるのは1ルートのみで、他4ルートはツッコミどころがあったり、素直に盛り上がれなかったりで微妙だった。登場人物は魅力的だし、『迷宮』や『楽園』ではどんな展開になっているのか見てみたい気もするけど、これでは続きにも手を出したものかどうか迷ってしまうな。まあ続きもやるかどうかは今後の気分次第ということで。

(以下ネタバレ)










(ネタバレ開始)


榊 由美子ルート

 一番最初に攻略したルート。OPでの扱いや全員集合した場面での立ち位置から察するにてっきりメインヒロインかと思ったらべつにそんなことなかったんだぜ。

 個別ルートに入った直後からすごくがっかりなルートだった。まずラスボス役の父親が小者過ぎる。こんなのがいちおう国家レベルの組織にも口を出せる大企業のトップって。そりゃ社会的地位が高いからといって必ずしも当人が優れているとは限らないかもしれないけど、物語としてこんな小物が敵役として出てきて翻弄されましたなんてことになってもしらけるだけだろ。もうちょっとどうにかならなかったのか。

 そして個別ルートの導入の展開となる襲撃。あんな露骨に怪しい恰好で襲撃って。しかも下手な襲撃をして毎回撃退されてって。そりゃ由美子の父親が仕組んだ茶番劇なんだけど、それにしたって毎回撃退されろなんて命じられているわけではなかったし、まして容赦するなと命じられてからも撃退されていたわけで。マヌケ過ぎるだろ。そして襲撃されるのはわかっているのに繰り返しのこのこ出かけていく由美子も、それを許す護衛役の雄二もアホ過ぎる。バカバカし過ぎて評価急下落だわ。

 で、そのあとがお約束のかけおち展開って。おいおい、そんなことしてもいつまでも続かずに追い詰められるのはわかりきっているだろ。なんでそんな馬鹿な選択肢を取るんだ。なんのための主人公の軍人あがり設定だよ? そりゃ元・下っ端軍人一人にできることなんて限られているといえばその通りだけど、かといって相手はすごい権力者だからかないませんなんて現実でもよくあるような展開をだらだら見せられても退屈なわけで。むしろそういった現実ではどうしようもないことをひっくり返すところに物語の醍醐味ってのはあると思うのだけどな。

 いちおう最後はちゃんとそのへんを考えられていて、一年間ただ逃亡していたのではなく、ちゃんと逆転のための策を進めていたんですというのは好印象だった。他のヒロインたちが有能過ぎね? とか、蒔菜が実家の権力を動かしたら蒔菜ルートで起こったような問題がこっちでも発生することになるのでは? とか、主人公やヒロインの能力や努力ゆえの解決というより結局他の権力頼みの解決ってのはどうなんだというツッコミどころもあるが。

 最後は由美子の父親も実は心底悪いやつじゃないんだよ的描写があったけどそれも安っぽく感じられてしらけるだけだった。

 このルートが終わった直後は、これがワーストでこれ以下のルートはないだろうと思ったんだけどなあ……


入巣 蒔菜ルート

 二番目に攻略したルート。金を受け取ってパパになる(愛人という意味じゃなくて父親という意味で)という個別ルート導入の展開にドン引きしどうなることかと思ったけど、個別ルートに入ってみると意外にもすごく楽しめた。雄二はきっちり蒔菜を見守りつつ、かといって必要以上に甘やかしすぎたりもせず、まっとうに育てているし、蒔菜も甘ったれすぎず成長もするしで、やってることはひとつ年下の女の子に「パパ」と呼ばれるという変態プレイ的なことなのに、擬似家族ものとしてすごく良くてびっくり(笑)

 しかし個別ルート後半の展開がなあ……。家の事情で連れ戻される蒔菜と一緒に逃亡生活という由美子ルートとモロかぶりの展開ってどうなんだ。蒔菜ルートと由美子ルートでシナリオ担当しているのは別の人らしいけど、シナリオライター同士でもっと展開がかぶらないように調整とかしなかったんだろうか。しかもこっちでもラスボス役の蒔菜の母親は小者臭いし、逃亡生活もどんどん追い詰められるだけで芸のない展開だし。最後も蒔菜の母親を殺すかどうかって、なにそのだれでも思いつきそうな安直な展開。せっかく個別ルート前半は良かったのに、後半はどんどんつまらなくなってしまってすげえがっかりだった。

 ところでこのルート、ハッピー(?)エンドの方はどう解釈すべきなんだろう。BADエンドとは違っていちおう雄二は生き延びているようだけど、意味ありげに帽子を目深にかぶっていて、なんだか蒔菜とのやりとりも反応がにぶい気がするし。BADエンドと同じで雄二は死んでいて実はあれは蒔菜が見ている幻とか、もっといってしまえばBADエンドももうひとつのエンドも表裏一体でBADエンドは客観的に見た蒔菜の姿で、もう一方のエンドは蒔菜の主観ではあんなふうに見えていますよということだとか? パン屋に来る客の反応が違っているからさすがにこれは考えすぎなんだろうけど、雄二が生き延びている方も雄二の思考や精神状態がまともでないという可能性は十分考えられそうで怖いなあ。まあそのへんは『迷宮』の蒔菜アフターを見ればわかるのだろうけど。


松嶋 みちるルート

 このルートがぶっちぎりで自分の好みに合わなかった。個人的ワースト。シナリオライターとしてはアホの子可愛いみちるを描いたつもりだったのかもしれないけど、個別ルートに入ってからのみちるが弱々し過ぎて、それでも雄二に好かれようとするみちるの姿が痛々し過ぎて見ていられなかった。そんなみちるに対する雄二の反応も、いくら無骨男という設定であってもここまで無神経な人物ではなかったと思うのだけどなあと違和感ありまくりだった。共通ルートや他ルートのみちるというキャラは好きなんだけどなあ。よりにもよって肝心の担当個別ルートで一番萌えられない描かれ方をしているとは。


小嶺 幸ルート

 これの前の三ルートですでにこの作品への期待値は落ちまくりだったのだけど、意外にもこのルートがすごく良かった。幸の抱えている問題を知り、それに頭を抱えてうじうじしたりせず的確に対処して幸が自分から問題に気づくよう導き、最後も見事過去と向き合わせて幸に心からの笑顔を取り戻すという、最初から最後まで一貫して楽しめたルートだった。幸の抱えている問題が家族に関わるものということで、なんだか感動系の家族ものみたいな印象もあったな。幸の母親の最後の言葉「どうして」が問いつめるための言葉ではなく、「どうしても見てもらいたいものが~」なのではないかというのも、ちょっとした一工夫が感じられて良かった。まあ最後の幸の問題解決のための鍵となる情報が向こうからタイミングよくやってくるのは(いちおう幸の手紙がきっかけになったという理由はあるけどね)さすがにご都合主義ではというツッコミどころもあるが、これぐらいなら許容範囲内。いいシナリオだった。


周防 天音ルート

 体験版に個別ルートの一部が収録されており、雄二の姉の一姫という重要人物が関わってくるということで一番期待していたルート。しかし個別ルートに入ってからの天音にどうも萌えなかった。なんでだろ。自分でもいまいち理由はよくわからん。しいていうならやはり都合良過ぎる女だったからかな? 美人で、面倒見が良くて、ばんばんHもOKで、時には適度にやきもちも焼いてくれて、でも聞いてほしくはないことは深くつっこんでこない、わがままも言わない物分りのよさも持ち合わせていて。どんだけ好条件の塊だよって感じで、リアルでこんなやつが身近にいれば文句なしだろうが(しかし高確率でどうしようもないダメ人間になってしまいそうだ(笑))、物語的にはこんなだと面白みがないというか。

 で、体験版にも収録されていた天音の過去の「エンジェリック・ハゥル」。これはとても読みごたえがあって良かった。極限状態の描写がすごかった。それでいて一姫というキャラが投入されているおかげで、暗くて陰鬱なだけの展開にならず、笑える場面もあったし。

 でも「エンジェリック・ハゥル」編の終盤の展開もちょっとなあ……。結局のところ天音は歩いて生還できましたってどうなんだという気が。歩いての生還は厳しいからあんなところで救助を待っていたわけで。ましてあのときの天音はろくな食生活じゃなくて身体は衰弱しまくりだし、その上、鬼となったかつて部活仲間から逃げなければならないわ、途中で一姫を失って精神的ショックも大きいわというとことんまで追い詰められている状況なのに。

 ものすごく都合よく解釈するならば、道が無くて迷ってしまうから厄介なのであって直線距離的にはそれほどたいした距離ではなかったみたいだから、下手に理性で道を探ろうとしたら逆に迷ってしまっただろうけど意識朦朧状態だったのが逆に幸いして一心に進もうとしたおかげ+火事場のバカ力パワーで超奇跡的に人里にたどり着けましたってことなのかもしれないけど、かなり無理があるよなあ。

「エンジェリック・ハゥル」終了後は過去のことを隠していた天音に対して雄二が「騙したなっ!」と怒ってうじうじするようなうっとうしい陳腐な展開にならなかったのは良かったけど、じゃあこのルートの最後の山場はどうするのかと思えば、不幸続きで落ちぶれたしょぼいおっさんの逆恨みで襲われるのが最後の山場って……。由美子ルート、蒔菜ルートに続いて小者の敵に翻弄されるのはこれで三度目だぞ。この作品は小者の敵しか出してはいけませんというルールでもあるのかと疑いたくなるレベル。

 あと気になったのが「エンジェリック・ハゥル」終了後の天音の扱い。周りから誹謗中傷を受けましたということだけど、あんな極限状態のあとなら周りの誹謗中傷なんて気にするのも馬鹿馬鹿しくならないだろうか。というか、周りの誹謗中傷を気にできるほどまっとうな精神状態に回復するのも困難な気が。

 さらに、そんな環境だからあの学園に転向することになりましたということだけど、そんなつらい思いをしている天音を家族が一人にさせておくだろうか? 他のルートなどで話題に出てくる天音の家族のイメージからすると、とてもそんな傷ついた娘を一人にしておくような真似はしない家族に思えるのだが。もちろん家族に迷惑をかけないように天音が自分から距離を置いたのだろうけど、それにしてもちょっと納得いかない。

 加えて気になるのが他のルートでは夏休みに入ると帰省するイベントがあること。特に蒔菜ルートなど携帯で天音に連絡を入れたときに友人がその電話に割り込んでくる描写があるけど、ということは事故の後にも普通に友達ができたということになるわけで。十分まっとうに社会復帰しているじゃないか。なのにあの学園にきたのはなぜ? というツッコミどころが。このへん、設定の詰めが甘く感じられて残念。

 最後は一気に時間が経過しまくって、天音がばあさんになって天寿を全うするところまで進んで笑った。いやまあ、最後まで生き抜いてやっと天音は罪が赦されたと思えるようになりましたってのはわかるのだけどね。


 というわけで各ルートのお気に入り順は 幸ルート>天音ルート=蒔菜ルート>由美子ルート>みちるルート。一部では光るものがあって十分面白いのに、あらが目立ったり最後のまとめ方がいまいちだったりといろいろ惜しい作品だった。

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