ショートストーリーズ 3分間のボーイ・ミーツ・ガール

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ショートストーリーズ 3分間のボーイ・ミーツ・ガール (ファミ通文庫)ショートストーリーズ 3分間のボーイ・ミーツ・ガール (ファミ通文庫)
井上 堅二 ほか 白味噌
エンターブレイン 2011-07-30

by G-Tools

"青春"の数だけ"出会い"がある―——。"3分間"をキーワードに独自の世界観で描かれる珠玉のボーイ・ミーツ・ガール。人気作家・井上堅二の贈る、幼馴染みとの窓越しの恋模様『三分間のボーイ・ミーツ・ガール』、野村美月が描く、猫嫌いの女の子への一目惚れの顛末『こっちにおいで、子猫ちゃん。』、新鋭・庵田定夏の紡ぐ『ガチで人生が決まる面接に行ってくる』など、書き下ろし8篇を含めた全19篇! 切なく甘くほろ苦いショートストーリー集。
 お目当ての作家が何人か参加しているので手を出してみたわけだが、せっかくだから全作品読んでみた。プロの作家でもこの手のショートエピソードはやはり難しいのだなというのがよくわかる一冊だった。お気に入りは「詰め込み教育の弊害と教室の片隅に彼女」「こっちにおいで子猫ちゃん。」「ネオンテトラのジレンマ」「先輩にリモコンを向けてみた」。

(以下各話感想・ネタバレあり・作者名敬称略)















(ネタバレ開始)

「3min.30cm」/ 田口仙年堂
 彼女と一緒に聞く曲の長さが「3分」。可愛い女の子が向こうから近寄ってきてくれるという都合のいい妄想のような話だが、男の子のドキドキ感はよく描けていたかと。

「詰め込み教育の弊害と教室の片隅に彼女」/ 日日日
 記憶がリセットされるまでの「3分」。テスト勉強の詰め込みすぎで他の記憶を失ってしまったとか、回答するたびに記憶が戻ってくるとか、3分という短い時間しかないのに記憶がリセットされてもメモ書きでそれまでの経緯を把握できるとか、ツッコミどころやご都合主義な設定はあるけど、お話だからねということで許される範囲か。ちょっとしたひとひねりはきいているし、男の子と女の子のニヤニヤできるような関係が伺える描写もあってよくできている作品だった。

「ガチで人生が決まる面接に行ってくる」 / 庵田定夏
 面接でその人の印象が大体定まるまでの重要な「3分」。短編ながら熱い展開の楽しめて良かった。

「ねこなぶり」 / 嬉野秋彦
 お目当ての作家の一人。踏み切りの遮断機が上がるまでの「3分」。今までシリーズものの短編集などはあったものの、この手の日常もののショートストーリーは書いたことがないはずのこの作者がどんなものを書くか楽しみにして読んでみたわけだけど、やはりこういう作品は苦手なんだなとよくわかる内容だった。いくら非常事態とはいえ猫を投げつける主人公は好感が持てないし、主人公がヒロインに嫌われたところで終わってどうする? 長編作品ならはじめの最悪の印象をここから主人公が挽回する展開が楽しめるのかもしれないが、短編でこの内容はだめだろ。

「三分間の神様」 / 榊一郎
 異世界召還ものなんて今となっては古臭いとすら言えそうなパターンだけど、電話でつながってちょっとアドバイスするだけというのはめずらしくてそのアイデアが面白かった。学校の勉強は役に立たないようで、見方を考えれば実はちゃんと意味があるというのがわかる展開は少々説教臭さを感じた。「実は異世界の姫というのは人間じゃなくて害虫の類か何かで、異世界の魔物というのは人間のことだったんだよ!」的なブラックなオチかと思ったが、さすがにそんなのではなかったか。異世界の姫の役割を演じていた女の子が現実にいて、その子と出会えるというのは都合のいいぬるいオチだと思うが、読者ウケを考えれば無難な落としどころか。

「七年前のマリッジリング」 / 本多誠
 情念を抱いた存在を時間移動させるタイムトラベル・エージェントという能力の設定がちょっとめずらしいだけで、あとはタイムトラベルもののお約束のパズル的展開があるだけといった感じでちょっともの足りなかった。タイムトラベルもののお約束を知っていればオチも簡単に読めてしまうしなぁ。

「お湯を注いで」 / 櫂末高彰
 カップラーメンの精霊は可愛いと思うが、内容的には山なしオチなし意味なしで残念。

「こっちにおいで子猫ちゃん。」 / 野村美月
 お目当ての作家の一人。なんというストレートな迫り方。長編シリーズのラブコメだと長く引き伸ばすために主人公が異常なまでに鈍感だったりするけど、たまにはこういうのもいいなぁ。ちょっと強引過ぎて心配になってしまうぐらいだけど。

「ネオンテトラのジレンマ」 / 綾里けいし
 他の作品は甘々な内容が多い中で、これだけやたらとブラックで異彩を放っていたのが印象的。やはり甘い内容ばかりでなく、ひとつぐらいはこういうのもあったほうがいいよな。ブラックだけどボーイ・ミーツ・ガールな内容なのも良かった。

「5400万キロメートル彼方のツグミ」 / 庄司卓
 人工知能に自我が芽生えるというのはロマンだなぁ。だがそれがいい(にやり)

「先輩にリモコンを向けてみた」 / 前書き
 リア充爆発しろ! とこの作品の主人公に言ってやりたい。マスター登録のやりとりが面白かった。

「トキとロボット」 / 羽根川牧人
 てっきり嫉妬してクイナを抹殺してトキを独占しました、機械が人間を殺すようになったのは愛ゆえでした、というオチかと思ったら、普通にハッピーエンドで意外だった。ロボットならではの3分間という短時間での高速バトル(実際に戦っていたのは70秒未満なわけだが)というアイデアが面白かった。

「ロイヤルコーポあさひの真実」 / 竹岡葉月
 ……さすがにこのオチは予想できなかった。人工知能とのボーイ・ミーツ・ガールとかロボットとのボーイ・ミーツ・ガールとか精霊とのボーイ・ミーツ・ガールとかいろいろあったけど、ある意味、一番このあと苦労しそうな組み合わせの気が。

「QとK」 / 築地俊彦
 こんな短編で能力バトルものとはびっくり。しかし殺伐とした内容で後味があまり良くなかった。

「3分間のABCD……」 / はせがわみやび
 この設定で長編の話を読んでみたい。面白いミステリになりそう。

「杉宮遥は男前っ!」 / 新木伸
 男だと思っていたら実は女の子だった! というオチはやはり容易に想像がついてしまった。この手の設定はいまどきはありふれているので、もうちょっと工夫がほしい。

「call」 / 佐々原史緒
 ボーイ・ミーツ・ガールものというにはガールとのやりとりがほとんど無かったのが残念。

「彼女の関する傾向と対策」 / 田尾典丈
 面接と称して告白しているだけでもの足りなかった。というか、似たような方向性の作品の「先輩にリモコンを向けてみた」を先に読んだ後だったので、設定にひねりが足りないように感じられてしまった。

「三分間のボーイ・ミーツ・ガール」 / 井上堅二
 お目当ての作家の一人。楽屋オチかよ! もっと甘い話を書こうよ! と不満に思わないでもなかったが、「三分間のボーイ・ミーツ・ガール」に関する設定がなんだか面白かった。

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